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ミャンマーのつぼ~ミャンマーから西垣がお届けするブログ

2020年ミャンマー総選挙振り返り

2020年ミャンマー総選挙振り返り。

昨日、2020年11月8日に行われた総選挙の選挙管理委員会から全議席確定が発表されました。

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5年前の前回総選挙が政権交代という象徴的な選挙だったので、今回は、批判がある程度前提の、5年間におけるスーチー政権の国民による審判という位置づけが多いようです。選挙前は少数民族政党との連立与党になるのではとも予想されましたが(私も・・)、結果は与党NLDが前回総選挙を上回る396議席で単独過半数を獲得し、少数民族政党は47議席。

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ロヒンギャ問題やコロナ対策でのロックダウンが野党に厳しく、政策論争にもならなかったことが与党に有利になったような文章も目にします。

選挙結果についての理由に、ロヒンギャ問題やコロナが入るのは事実としても、それを中心に結論付けるのには違和感を感じます。

私は日本人ですし、ミャンマー人社員の意見をベースにしています。そこでは、こちらが質問しない限り、ロヒンギャやコロナの影響との回答はなかなか出てこないですね。ただ、弊社社員らがミャンマー国民の総意ではなく、この国は連邦共和国なので、いろんな意見が出て当然ですので、どこを軸に置くか。

台湾では、選挙=祝祭 と捉え投票率が高い、80年代に民主主義を獲得するまで苦労したことも要因と聞きました。単一民族で民主主義は生まれた時からあった我々世代の日本人とは、そもそも選挙に対する考え方が違う。台湾以上に他民族国家で、自ら民主主義を獲得した世代であるミャンマーの有権者らは、さらに選挙に対する軸が、日本人とは全く違うので、私の感覚で評価するのは、無理があるとも感じています。

半世紀に渡る軍政から2010年に民政移管したとは言え、2015年までは軍政の流れ。それを引き継ぎ、すぐ初年度から結果が出せずに批判されるのも、なかなか厳しいものがあります。

この5年間の成果について、軍政時代の半世紀分を「修復している期間」という評価が社内でよく聞かれます。「結果はすぐには出ないでしょ」と、社員らは現実的ですし、説得力があります。当地で経営している身としても同意見。

今後も、少数民族との融和がポイントで、中国との付き合い方が注目されますが、それは今に始まった訳でなく、地理上・歴史的背景からくる、白黒の決着ができないであろう課題。

 投票実施できなかったり、都市部と地方における一票の格差など、様々問題はありますが、わずか5年ですべて解決する訳ありませんし、今後5年で、完全に解決できる問題でもないかと思います。

最近読んだ本に「ネガティブ・ケイパビリティ」というのがあります。

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不確実なものや未解決のものを受容する能力、答えの出ない事態に耐える力が必要という本でした。ここミャンマーは、何年いてもよくわかりません。日本人ですが、日本もよくわかりません。知らない原理や力が動いているような、そうでないような、よくわからない世の中。早急な結論を求めず、「ほどほど」を大切に、そして過激な意見には飛びつかず、じっくり生活し、経営していきたいと思います。

今月に入り、5年のスーチー政権の評価等々のコメントを何度か求められ、それらを答える中で、軍政時代との比較があり、当時を振り返る機会が何度かありました。
一昨日からの3連休。急に、「坂の上の雲」のドラマをみたくなって、一気見しました。
「一身独立して一国独立す(福沢諭吉」「戦争するのは武器ではなく人」

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この5年間のミャンマーは、政策が原因で停滞期間があったかもしれませんが、経済発展するにも投資するにもインフラが整っているのが大前提。教育改革や道路建設など基礎部分作りをベースに、なりふり構わない外資誘致は行わず、将来を見越した政策を行っている現政権は、評価に値するのではと思います。

5年後、総選挙前後でまた同じような質問を受けると思いますので、どのように回答するか楽しみです。

J-SATの卒業生が躍動していたら嬉しいですね。2030年の選挙の時かな・・・

追伸:日経ビジネスに選挙関連でコメント掲載して頂きました。2020年11月17日号

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